「う、うぅん」
目が覚めるとそこは森の中だった。中とはいっても直ぐ側に街道のようなものが見える。森の端のほうなのだろう。
神のような存在との会話はまだ覚えている。恐らく意味も分からずこの世界に降り立ってまた混乱しないようになのだろう。まずは自身の状態を確認する。確かにこの世界の基本的な知識が分かる。
次に持ち物なども確認してみる。 服装はこの世界の旅人の標準的なもののようだ。 持ち物は何やら色々入った背負い鞄を持っている。 どうやら死んだときに持っていたのと同程度の品物があるようだ。 ありがたい。これならうまく売ることさえできれば一先ず生活に困ることはないだろう。あとは、能力か。魔法は残念ながら使えない様だ。
スキルはあるな。良かった、こんな世界で魔法もスキルもなかったら生きていく自信を無くすところだった。 早速スキルの内容を確認してみる。--------------------------------
スキル:わらしべ超者Lv1 自分の持ち物と相手の持ち物を交換してもらうことができる。交換レートはスキルレベルと相手の需要と好感度により変動する。
スキル効果により金銭での取引、交換はできない。--------------------------------
・・・・・・は?
信じられない気持ちで見直すが何度見ても結果は変わらない。 金銭での取引はできない?なんだそれ、商人として終わってないか? いや、確かに田舎の村では農作物と薬や消耗品などを物々交換していたこともあるが、基本は金銭での取引だった。 この世界の常識と照らし合わせてみても基本は金銭取引だ。 それになんだ交換レートは好感度により変動するって! いやまぁ、嫌いな人からは買いたくないとか好きな人には奮発するとか分からなくもないけど、これどの程度変わってくるんだ? スキルの詳細を知ろうとしても情報は出てこない。とりあえずどこかの村や町で試してみるしかないか。
何だかいきなり商人としての道に影が差した気がして気落ちするが、まずは生活基盤を何とかしないとそれ以前の問題になってしまう。 手持ちの食糧も心もとないしまずは町か村を見つけないとな。 そう考えてまずは街道に出て周りを見渡してみる。 幸いなことに視界の端の方に村のようなものが見えた。 スキルはともかく村の近くに送ってくれたのはあの観音様に感謝だな。 そう思いつつ村の方へ歩いていく。道中薬の材料になる草花も森の側にいくつか生えていたので摘んでいくことにした。「お、これも良さそうだな」
こういうものの知識があったのはありがたい。需要さえあれば元手ゼロで稼げ・・・もとい取引できるからな。
そう思い摘んでいると、森の奥でカサリと音がした。 嫌な予感がしてそちら見るとそこにはウサギの様なものが居た。 様というのはそのウサギの額には立派な角が付いていたからだ。 一角ウサギ。この世界ではポピュラーな動物だ。危険度は低い。 但しその危険度はある程度戦闘技術を持つ者での基準だ。 つまり今の俺には十分危険な相手ということになる。 思わず固まっていた俺とそいつの目が合った。 するとそのウサギは獲物を見つけたように姿勢を低くした。(ヤバい!)
咄嗟に右に飛ぶとその横を飛び掛かってきたウサギが通り過ぎて行った。
慌てて立ち上がり、ウサギが再度姿勢を整える前に街道に戻ると村の方へ向かって走る。 まだ後ろからウサギが追いかけてきているのが足音で分かる。「た、助けてくれー!」
村の前に立っていた門番のような男にそう叫びながらまた右に飛ぶ。
少し前に後ろの足音が聞こえなくなったのだ。 案の定飛び掛かってきたウサギが脇を通り抜けていき門番の男の手前辺りで落ちた。 男は俺の声で気づいていたようで、慌てることもなく持っていた槍で着地したウサギを見事に仕留めた。優秀な人のようだ。助かった。 立ち上がって男のほうまで行きまずは礼を言う。「助けて頂きありがとうございました」
「あぁ、そんな畏まらなくていいよ。それよりあんた護衛もなしに旅をしてきたのか?一角ウサギくらい自分で対処できないなら一人旅は危険だぞ」 「いやぁ、返す言葉もない。一応対策は用意していたんだが咄嗟のことで慌ててしまって」一応嘘ではない。鞄の中には目つぶしに使えそうな粉末がある。だが、あの時すぐに取り出せるような状態ではなかった。
「そうだったのか。それは災難だったな。こっちは今日の飯が豪華になりそうでラッキーだったが」
一角ウサギの肉は美味いらしい。それに角は薬の材料になるということで危険度の割に素材が優秀で低ランク冒険者にとっては美味しい獲物だった。
「はは。それは良かった。ところでこちらは何という村ですか?」
「なんだここの名前も知らずに来たのか?ここはリブネントだ。」男は少し怪訝そうな顔をしながらも教えてくれた。
「リブネントですか。いや実は、道中で少し事情があって道を変えてしまったもので」
「なるほど。襲われたのがこの近くで良かったな。この辺は危険な生物もほとんどいないし」咄嗟のごまかしだが納得して貰えたようだ。
不審に思われるのは承知だが聞いておかなければならなかった。村内でも話題に出るかもしれないし、次の村か町でもどこから来たか聞かれる可能性があったからな。「そうですね。優秀な門番さんにも助けて貰えましたし」
「よせやい。まぁ、うちの村には商人が来ることも少ないからあんたの品物によっては重宝されるかもな」 「そうなんですか。今は薬が多いんですが需要はありそうですか?」 「薬なら売れるだろうな。しばらく薬を扱ってた商人が来てなくて最近は不足気味になっているからな。」 「そうか。それなら役に立てそうです。村のこともう少し聞いても良いですか?」 「あぁ、構わないぞ」そうして門番の男から色々聞くことができた。
村には小さいが道具屋と食料品を含む雑貨屋、後は食堂兼宿屋があるらしい。残念ながら武器屋はなかったが、道具屋でナイフか杖程度ならあるだろうとのこと。 村の周辺は畑が殆どであとは俺がきた森があるくらいという話だった。 異世界で碌な準備もなくいきなり野宿は避けたかったので宿屋があるのはありがたい。「なるほど。色々と助かりました。これ、よければ使ってください。一角ウサギの肉に合うと思うので」
「あぁ気にすんなって・・・ん?まさかこれソランの実か?高級品じゃないかほんとにいいのか?」 「あぁ、助けて貰った上に色々教えてもらいましたから。そのお礼です」 「そうか、じゃぁ遠慮なく。あとで妻にも話しとくよ。良さそうな商人が来てるってな」 「ありがとう。それじゃ」そうして門番の男と別れ、食堂兼宿屋へ向かう途中でふと気づいた。
・・・金がない。昼食を終えて少しゆっくりした後は、再び街中を適当に散策していた。 すると町の一角に市場のような場所があった。 近くの人に尋ねてみると、ここはフリーマーケットとして開放されている広場で誰でも自由に取引ができるようになっているようだ。冷やかしや珍品目当てなど目的は様々だが、観光客も多く結構な人で賑わっていた。 商人としては、こんな光景を見てしまうとどうしても気になってしまう。 一通り見て回ったところで俺は二人に断りを入れて、自分も露店を開くことにした。「せっかくの骨休めでしたのに。でも、やっぱりアキツグさんはそういう姿が似合いますね」 『最近は色々あったけれど、やっぱり根は商人ってことよね』 「そ、そうか?まぁなんだかんだで歴は長いからな。二人は気にせず楽しんできてくれ」 「分かりました。ロシェさん行きましょうか」 『えぇ。アキツグ、さっきも言ったけど一応気を付けてね』 「あぁ、分かってるよ。そっちもな」取引を終えて宿に戻ろうとしたところで、違和感に気づいた。 ロシェの気配がしばらく前からずっと同じところに留まっているのだ。 少しくらいなら景色を眺めていたり、軽食を摂っていたりということもあるだろうが、そう考えるには時間が経ち過ぎていた。 気になった俺はロシェの気配の方へ向かうことにした。 気配を追っていくと辿り着いたのは建物の隙間にできた小道の様な場所だった。 ロシェの気配は、未だにその十字路になっているあたりに留まっている。近づいてもこちらに気づく様子もなく、近くにカサネさんの姿もなかった。(おいおい。嘘だろ?あの二人も警戒はしていたはずなのに、一体何があったんだ?)一応俺は警戒しながらロシェに近づいて行った。当たりに人の気配はなかったが、二人に何かをした存在がまだ隠れている可能性もあったからだ。 しかし、そんな警戒も空しく何事もなくロシェの側まで行くことができた。 ロシェは姿隠状態のまま気を失っているようだった。揺り起こすと少しして目を覚ました。『う、くっ、ここ・・・は?』 「大丈夫か?何があったんだ?」
「コゲンジさん、お久しぶりですね」 「えぇ本当に、エレンジアである日から急に姿を見かけなくなったので、心配していたんですよ。今まではどちらに?」 「レインディア大陸の方に渡っていました。冒険者ですから、他の街に移るのも別に珍しいことではないですよ」 「それは…そうかもしれませんが、友人が急に居なくなったら寂しいじゃないですか。せめて一言教えてくだされば良かったのに」 「それはどうもすみません。少し急いでいたものですから」パッと見る限りでは知り合いが再会の会話を交わしているだけにも見えるが、 二人の温度差には明らかに違いがあった。カサネさんの口調も普段とは異なり硬いものだ。恐らくはこの人物が以前にカサネさんが言っていた面倒な人なのだろう。相手の様子からもこのままだと面倒な展開になりそうだ。ここは割って入るべきだろう。 俺は灯り石を購入すると、敢えて今の会話に気づいていなかった素振りでカサネさんに声を掛けた。「カサネさんお待たせ。石も良いのが買えたしそろそろ昼食にでもいこうか」 「あ、はい。コゲンジさんすみません、連れも戻ってきたので私はこれで」 「えっ!?ちょ、ちょっと待って下さい。連れってこの人がですか?カサネさん、ずっとソロで活動していて特定のパーティには参加していなかったのに」前までがそうだったとして、何でパーティを組んだくらいで問い質されなきゃならいないのだろうか。そんなことまで知っているのも含めて本当に面倒そうな人だ。「今まではパーティを組みたいと思う人が居なかっただけですよ。連れを待たせるのは悪いのでこれで失礼します。行きましょう、アキツグさん」そういうとカサネさんは俺の腕を掴んでさっさと歩きだした。腕を引かれた俺もその後に続いたが、振り返る前に一瞬目が合った彼は俺のことを憎々しげに睨みつけていた。 しばらく歩いて近くにコゲンジの気配がないことを確認した辺りで、カサネさんが一息ついてこちらに謝罪してきた。「さっきはすみませんでした。まさかこんなところで会うなんて。あの人が以前話していたコゲンジさんです」 「やっぱりか。知り合いみたいなのにあんな風に接してたか
カランダルさんに紹介して貰った宿屋で部屋を取った俺達は、さっそく温泉に入りに来た。観光地だけあってペット同伴で来る人も多いらしく、専用のエリアも用意されているため、ロシェも問題なく入れるようだった。 なおロシェにはカサネさんと一緒に女湯の方に行って貰っている。気にする必要もないとは思うが、まぁ気分的なものだ。 体を洗って温泉に入ると、温泉の温度もちょうどよく、蓄積された疲れがゆっくりと温泉に溶けていく様だった。「あ~やっぱりこれだよなぁ。景色も良いしカランダルさんがお勧めしてくれたのも納得だな」紹介された宿は街の端にあり、温泉からは周囲の山々が見渡せるようになっていた。温泉もいくつか種類があり、泉質も異なっているようだった。 前日の件で睡眠時間が少なかったのもあり、うっかり湯の中で寝てしまいそうになったが、何とか耐えて部屋まで戻ってきた。 少し休んでいると仲居さんが夕食を持ってきてくれた。それらも豪勢でどれも美味しいものだった。ただ、こんなところでもライアン果樹園の果物が出てくるのは流石というべきか。きっと提携しているということなのだろう。 そして、驚いたことに寝具に布団一式まで用意されていた。ここにも前の世界の住人が何か知ら関わっていたのかもしれないが、睡魔に負けた俺はそこまで考えることもなくその日は早々に眠りについたのだった。翌日、俺達は三人で温泉街を見て回ることにした。 昨日カランダルさんに聞いた話によると、ヤミネラさんと属性付与とカランダルさんの特性付与については素材さえ揃っていれば、付与自体はそれほど時間の掛かるものではないらしく、数日もあれば終わるだろうとの話だった。 なので、それまではこの温泉郷で骨休めというわけである。やはり観光地だけあって町並みは美しく、街の中央には温泉饅頭や温泉卵、湯豆腐など温泉街ならではといった食べ物や土産物屋が立ち並んでいる。各温泉を巡るスタンプラリーまであるようだ。街の奥は山道まで続いており、山中には秘湯のようなものまであるらしい。 一応冒険者ギルドや商人ギルド、武具や道具屋などもあるのだが、そのような店舗は街の一角に目立たない感じで存在していた。「なんか今まで
「ま、まさか?!こ、これも黒真鉄だ。あれだけ探しても見つからなかったというのに・・・あなた達は一体?」 「えぇっと、まぁ色々ありまして。ともかくこれがあれば刀を鍛えることができるんですよね?」 「それはそうなんですが・・・もともと自分で見つけるつもりでしたので、あなた方からこれを買い取れるような資産を私は持ち合わせていないのです」言われて気づいた。正直俺から見ればあの本を見つけた時の副産物程度の認識だったのだが、希少品であるならば相応の価値で取引するのが当然ではある。 とはいえ、ハクシンさん、ヤミネラさんと繋がれてきたバトンの結果が完成しませんでしたとなって欲しくはない。さて、どうしたものか。。 カサネさんの方を見ても同じように困ったような視線が返ってくる。「それじゃぁ、支払いは一旦保留にして、刀ができてから考えるというのは?」 「・・・それは借金ということかい?確かに現状それを譲り受ける方法としてはそれくらいしかないかもしれない。しかし、返せる当てもないのに借金をするのはちょっとね。ヤミネラが信じた君達を信じないわけではないけれど」う~ん。まぁカランダルさんの言うことももっともだ。俺だって逆の立場だったら躊躇するだろう。でも、これもダメとなるともうタダで譲るくらいしか・・・「一つ確認したいのだけれど、そのような提案をしてくれるということは君達にとっては黒真鉄は条件次第で渡しても良いものという認識であっているかい?」 「そうですね。今のところ使い道もありませんし。カサネさんも良いよな?」 「はい。アキツグさんと同じですね」 「そうか・・・であれば、一つ提案があるんだけどそのためには私の秘密も話さなければならない。だから、これから話すことは口外しないと約束して欲しい」問われて俺とカサネさんは顔を見合わせた。この状況を変えられるのであれば是非聞きたいところである。二人でカランダルさんに頷いた。「分かりました。口外しないことを約束します」 「ありがとう。これは私の仕事にも関わることなんだけどね。ヤミネラが属性付与師なのは知っているだろう?それじゃ、ヤミネラが属性付与した刀に私は何をす
近くで野営をしていたこともあり、午前中にはバーセルドに着くことができた。 バーセルドは泉源都市とも呼ばれており、文字通り、街の内外を問わずあちこちに源泉が存在していた。そのためまさに温泉郷といった感じで、様々な泉質を売りにした温泉施設や温泉付きの宿泊施設が立ち並んでおり、街中には無料の足湯場まで作られている。フォレストサイドが近いためだろう、建物は木造建築のものが多くそれがまた和風の雰囲気を漂わせていた。「これはまた・・・なんていうか、初めてきたのになんか懐かしさを感じるな」 「ですよね。私も初めて来た時は同じような感想を持ちました」 『今まで立ち寄った街とはまた雰囲気が違うわね』思わずそのまま近くの温泉に入りに行きたくなったが、そこはぐっと我慢してまずは目的を果たすことにする。代わりに足湯場でのんびりしている人達に混ざりつつ、カランダルさんの鍛冶屋について聞き込みをすると目的の場所は簡単に教えて貰うことができた。 礼を言ってその人達と別れ、教えられた鍛冶屋の前までやってくると一人の男性が店の前で掃除をしていた。俺達が近づくとその男性もこちらに気づいた。「こんにちは。こちらにカランダルさんはいらっしゃいますか?」 「カランダルは私ですが。何か御用でしょうか?」 「ヤミネラさんから手紙と伝言を預かってきました」俺がそういうと、カランダルさんの表情が少し真剣なものに変わった気がした。「なるほど。こんな温泉街で私の店を訪れる人は珍しいので、どういった御用かと思ったのですが。とりあえず中へどうぞ」カランダルさんはそう言うと店の扉を開けて俺達を中へ招き入れた。 店の中はきれいに整理整頓されていた。数日前に見たヤミネラさんの店はもっとごちゃごちゃしていて雑多に物が置かれていたので、なおさら印象深かった。 それに店主のカランダルさんも口では言い表せないのだが、なんだか不思議な雰囲気を持った人物に見えた。「綺麗なお店ですね」 「そうですか?・・・あぁ、ヤミネラの店を見たんですね。あの子は片付けが苦手ですからねぇ。逆に私は片付いていないと落ち着かないもので、あの子とはよく言い合い
テントにカサネさんを寝かせてから少し先ほどのことを思い返してみたが、 やはり何も分かりそうになかった。あの魔法についてはカサネさんが起きたら 聞いてみるしかないだろう。 一先ずはそう結論付けて朝食の準備をしていると、少しして二人が起きてきた。「二人ともおはよう。カサネさんは大丈夫か?」 『おはよう。あのあと何かあったの?』 「おはよう・・・ございます。っ!大丈夫とは言い難いですね。頭痛が酷いです。 魔法を発動させた以降の記憶がないんですけど、あのあとどうなりました?」やっぱり、魔法を発動させた瞬間に気を失っていたのか。 結果論になってしまうが、あの時無理にでも止めるべきだったな。「魔法は発動していたよ。突き出した手の先にあった竹の間に黒い球が現れて、次の瞬間には黒い球ごとそこにあった幹も消失してた」 「そうですか、、一応発動はしたんですね。制御しきれずに気を失ってしまったみたいですけど、大惨事にはならなかったみたいで良かったです」 「危険な魔法かもしれないと分かっていたんだし、万全の状態で使ったほうが良いんじゃないかと止めるべきだったよ。ごめん」謝る俺に対して、カサネさんは被りを振って返してきた。「いえ、精神状態もそうですけど、あの時の私はちょっと忠告されたくらいでは止まれなかったと思います。だから、あの結果は自業自得です。アキツグさんが謝ることじゃないですよ。こちらこそすみませんでした」そういってカサネさんは深々と頭を下げた。だいぶ参っている様子だ。「いやまぁ、あんな特別な魔法を覚えたら誰だって興奮するだろうし、早く 試してみたくなっても仕方ないさ。今回は大事にはならなかったわけだし、 お互い次回から気を付けるようにしよう」 「はい。ありがとうございます」 『反省して次回に行かせるなら良いんじゃない?その時寝ていた私は正直何とも言いづらいけれど』その後三人で朝食を取っている間もカサネさんは少し気落ちしていたが、 気を取り直したのか食べ終わる頃には一先ずいつもの様子に戻っていた。 落ち着